イチョウ葉から抽出されるエキスには、フラボノイドやギンコライドという有用成分が含まれています。
欧米先進国では人口の高齢化とともに、高齢者の認知機能の低下を抑える、または改善する効果をもつ物質への関心が高まっています。イチョウ葉抽出物はドイツを中心に研究が行われており、認知機能に有用であることからヨーロッパで広く普及しています。欧米の認知機能改善に有効なサプリメントの市場では、イチョウ葉抽出物を含む製品が最大のシェアをもっています。
イチョウ葉エキスについて
イチョウは、古くから漢方薬として利用されてきた歴史があります。認知機能の改善効果に注目されるようになったのは、1960年代にドイツの製薬会社が研究開発したイチョウ葉エキスが、脳や体の血流改善に使用されたことに始まります 。
このイチョウ葉エキスは「EGb761」と名付けられ、有効成分として、複数の異なる種類のフラボノイドを24%、テルペノイドを6%含んでいます。日本でも、日本健康・栄養食品協会が、イチョウ葉エキスについて同等の規格を定めています。
イチョウ葉エキスの機能
認知機能の改善
45~56歳の健康な男女188名を、プラセボ群(イチョウ葉エキスを含まないものを投与)と、イチョウ葉エキス投与群(EGb761を1日あたり240mg)に分けて6週間継続投与した後、評価テストを行いました。このテストでは、複数の予定を学習(覚える)してもらい、後になってそのうちいくつを想起できるか(思い出せるか)を評価しました。その結果、イチョウ葉エキス投与群のほうで、思い出せる予定の数が顕著に改善されたことが分かりました。
このテストで評価した、一度覚えたことを脳内で検索する能力は、加齢とともに低下することが知られています。イチョウ葉エキスは、こうした要求レベルの高い認知機能の改善に対して、有効であることが分かりました。
脳の神経細胞の保護
イチョウ葉エキスは、活性酸素の過酸化水素やアルツハイマー病の原因といわれるアミロイドβによって引き起こされる細胞死から、神経細胞を保護することが、培養細胞を用いた実験から明らかになっています。
アルツハイマー病の予防と症状改善
アルツハイマー病に対する有効性を調べた研究は多く、複数の作用メカニズムが示唆されていることから、イチョウ葉エキスはアルツハイマー病に対して有効であると言われています。
アルツハイマー病は、脳内に異常タンパク質であるアミロイドβタンパク質が線維化して塊となって蓄積することが特徴です。
イチョウ葉エキスの機能として、アミロイドβの線維形成を抑制する可能性があることが報告されています。
また、アミロイドβには神経毒性があるのですが、イチョウ葉エキスはその毒性から神経細胞を保護することが明らかにされています。
イチョウ葉エキスを効率的に摂取するには
イチョウ葉を食事に取り入れることは難しいので、現在のところはサプリメントなどで摂取するしかありません。
参考文献
瀧本 洋, 田畑 隆司, 伊藤 篤史, 近藤 澄夫
健常中高年者におけるイチョウ葉エキス含有食品の認知機能に及ぼす効果および安全性―無作為化二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験―
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佐々木 啓子, 松岡 耕二
イチョウ葉エキスの薬理活性
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Neuroprotective and Antioxidant Effect of Ginkgo biloba Extract Against AD and Other Neurological Disorders.
Neurotherapeutics, 16 (2019)