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認知症を種類別に解説!それぞれの原因や症状とは

認知症はさまざまな脳の要因から認知機能が低下し、日常生活に影響を及ぼしていく病気です。

その認知症には大きく分けて4つの種類があります。

今回は認知症の種類別に原因や症状を解説していきます。

認知症の種類

認知症の種類は大きく下記の4つに分けられます。

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 脳血管性認知症
  • 前頭側頭型認知症

それぞれ原因と症状を解説していきます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、最も多いと言われている認知症です。

厚生労働省科学研究の資料である2013年5月報告の「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」からも、アルツハイマー型認知症は67.6%と最も多い比率となっています。

原因と症状に分けてみていきましょう。

原因

通常は排出されていくアミロイドβやタウ蛋白という物質が、加齢とともに細胞膜の流動性が低下していくことによって脳に蓄積されます。

増加したアミロイドβやタウ蛋白が、神経原繊維の変化や神経細胞の死を誘発することで、認知症のさまざまな症状を発症するとされています。

しかしなぜアミロイドβやタウ蛋白が増加していくのかという要因は、明らかになっていません。

症状

下記が主にアルツハイマー型認知症で出現する症状です。

  • 物忘れ
  • 記銘力障害
  • 視空間性障害
  • 語健忘
  • 失行
  • 意味・記憶障害
  • 病識や自発性の低下 など

症状や程度には個人差がありますが、具体的な例をみていきましょう。

例えば視空間性障害によって、図形や立方体などを認識したり書いたりすることができなくなります。また空間をうまく認識できないことによって、日常生活に必要な箸などの道具を使えなくなったり、更衣ができなくなったりする失行なども起きやすいです。

また、語健忘や記憶障害などが重なると、発する言葉の数が減ったり理解できる言葉が減っていったりします。

アルツハイマー型認知症の一番の特徴とされるのは記憶障害であり、約束を忘れる、同じ話を繰り返す、どこに物を置いたのかわからなくなることが起こります。

しかし病識や自発性の低下も症状として存在するため、なかなか早期発見に至りにくく、気づいた時には症状が進行しているケースは少なくありません。

さらに BPSDと呼ばれる妄想や幻覚、興奮などの心理症状が多く出現するのも特徴で、症状が進行していくと、徘徊や怒りっぽいなどの行動もみられます。

完治を目指す薬は現状存在しませんが、進行を遅らせる薬は存在します。進行を遅らせる薬の内服をしつつ、環境調整やリハビリなどを行っていくのが一般的な治療方法です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は前述の報告にて、認知症全体で3番目に多い4.3%の比率を占めています。

レビー小体型認知症について、原因と症状を解説していきます。

原因

レビー小体型認知症は、脳にレビー小体という蛋白質が増加し蓄積していくことが原因です。

増加したレビー小体が脳の細胞を傷つけたり破壊したりすることによって、認知症の症状を引き起こしていきます。

また、パーキンソン病という手や足の震えや歩行障害が生じる病気の方にも、同じレビー小体が見られるため、似たような症状を呈します。

症状

レビー小体型認知症の症状は幅広く、個人差がありますが下記のようなものがあります。

  • うつ症状
  • 幻覚・妄想
  • レム期睡眠行動異常
  • 認知機能障害
  • アパシー(無関心)
  • 手足の震え
  • 動作緩慢(動きが遅くなる)

うつ症状や無関心を指すアパシー、幻覚や妄想などの精神面での症状がみられ、人によっては睡眠中に大きな声を出したり暴力的な行動を取ったりするレム期睡眠行動異常も起こります。

また、手足の震えや動作緩慢、歩幅が小さくなるなどのパーキンソン病のような症状も出現するのが特徴です。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は前述の報告で19.5%を占めており、2番目に多い認知症です。

それぞれ原因と症状を見ていきましょう。

原因

脳血管性認知症は、脳卒中や脳梗塞などの脳血管の障害による脳血管性疾患から引き起こされる認知症です。

脳血管疾患を引き起こした全員が脳血管性認知症になる訳ではなく、脳血管性認知症の場合は脳血管性疾患の症状が見られた後に、認知症様の症状が出現します。

症状

脳血管障害が生じた箇所によって症状が異なる場合もある「まだら認知症」というのも存在するため、一概に同じ症状ではないのも特徴です。

例えば大脳で脳血管障害が生じた場合、下記の症状が起きやすいです。

  • 失語・失行・失認
  • 構成障害
  • 視空間障害
  • 運動麻痺

また、高次能機能に重要な箇所で脳血管障害が生じた場合には、下記のような症状が起きやすいです。

  • 意欲低下
  • 無為
  • 記憶障害
  • せん妄

他にも全身の症状として、ふらつきや歩行障害、転倒、排尿障害などがあります。症状だけでなく進行のペースにも個人差があり、ゆっくりと進行する場合もあれば、急激に進行していく場合、小さな梗塞を繰り返し段階的に進行する場合もあります。

治療は脳血管疾患の症状に応じた、薬物療法を行っていくのが基本です。

人によっては脳血管疾患の要因となる糖尿病や高血圧に対する薬を内服したり、精神症状が強い場合には抗うつ薬を内服したりします。

前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)

前頭側頭型認知症は以前の呼び名であり、正しくは前頭側頭葉変性症という病名で難病指定を受けている病気です。

前述の報告からは認知症全体の1%を占めています。

それぞれ原因と症状を解説していきます。

原因

大脳の前頭葉や側頭葉という部分を中心として、神経変性が起きることが原因です。神経細胞が脱落したり、タウ蛋白などの異常蛋白が蓄積しているものの、その原因はわかっていません。

また、一般社団法人日本神経学会の2017年の認知症疾患診断ガイドラインによると、家族性のものも30〜50%で欧米では存在するものの、日本ではほとんど見られないとされています。

症状

一般的な症状は下記です。

  • 失語
  • 記憶障害
  • 常同行動(同じ行動を繰り返す)
  • 脱抑制・反社会的行動

失語の中でも診断基準の必須項目としても挙げられている「物品呼称の障害」と「単語理解の障害」が特徴的な症状で、物品の意味や名前がわからなくなります。

例えば富士山の写真を見せても山ということはわかるものの、「富士山」という特定のものだと認識するのが困難です。

他にも脱抑制・反社会的行動と言って万引きなどの行動を起こすこともあり、デイケアの利用や認知行動療法などを行い、社会的に問題がない行動へ置き換えるという対応が行われる場合もあります。

根治可能な薬は開発されておらず、抗うつ薬や前述した行動療法などの治療が行われます。

認知されにくい若年性認知症

主な認知症と言われるものは紹介した4種類ですが、他にも認知されにくい「若年性認知症」というものが存在します。

そもそも高齢者がかかる病気と認識されやすい認知症ですが、若い年齢でも発症することがあり、65歳未満での発症の場合に「若年性認知症」と呼ばれます。

厚生労働省「若年性認知症ハンドブック」の資料によると、若年性認知症の発症年齢は平均で51.3歳です。そのうち3割は50歳未満で発症しており、患者の総数は2009年3月時点で全国に約4万人いるとされています。

原因となる疾患は血管性認知症が最多で全体の4割を占めており、今後超高齢化社会に突入する中で、さらに患者数の増加が見込まれるでしょう。

働き盛りな年齢で発症するため経済的な問題や家族で生活を送る上での問題が生じやすいことから、支援の重要性が注目されています。

認知症と症状が似ている病気

認知症に似た症状を持つ病気がいくつかあります。下記の表にまとめました。

病気名症状原因
ビタミンB12欠乏症めまい、息切れ、筋力低下、軽い抑うつ、せん妄、錯乱 など動物性食品に含まれるビタミンB12の摂取不足や吸収不良。
慢性硬膜下血腫頭痛、物忘れ、手足の脱力感、意識障害 など交通事故や転倒などの頭部外傷。
正常圧水頭症歩行障害、バランス障害、尿失禁、注意散漫 など原因ははっきりしないが、一部の方は脳出血や髄膜炎の既往がある。
プリオン病妄想、失行、筋硬直、無言状態 などプリオン蛋白の増殖が原因だが、増殖の原因は不明で根本的な治療方法はなし。
ハンチントン病不随意運動(思いに反して体が動く)、痙攣、苛立ち、興奮、抑うつ、徘徊 など染色体の変化が要因だが染色体が変化する原因は不明。根本的な治療方法はなし。

上記の病気の中でもプリオン病とハンチントン病以外は、治療可能な認知症という概念で扱われているものの、全てにおいて早期発見と治療の開始が重要です。

認知症は早期の鑑別が重要|軽度認知障害に気づく

認知症は大きく4つの分類が存在するだけでなく、若年性認知症や認知症に似た疾患も多く存在します。

全てにおいて早期発見・早期治療が重要であり、早めに兆候に気づくことが大切です。

早期発見の兆候として重要なものに、軽度認知障害(MCI)があります。軽度認知障害(MCI)のうち改善する例もあるものの、年間10〜15%が認知症へと進行するため、軽度認知障害の兆候に気づくことが認知症の進行予防に非常に重要です。

下記が軽度認知障害(MCI)の定義です。

  • 本人や家族によって物忘れの訴えがある
  • 基本的に日常生活を送ることができており、全般的な認知機能に問題はない
  • 年齢や教育のレベルではない記憶障害がある

軽度認知障害(MCI)の症状に家族など周囲の人が気づき、いわゆる認知症予備軍の段階で対策していくことで、進行を遅らせ発症を防ぐことにつながっていくでしょう。