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フェルラ酸

フェルラ酸は、植物が持つ健康維持成分であるファイトケミカルの一つです。抗酸化作用をもつ、クルクミンやアントシアニンと同じポリフェノールの一種です。主に、植物の細胞壁に多く含まれています。

フェルラ酸について

ポリフェノールの一つであるフェルラ酸は、細胞やDNAを傷つける活性酸素を消去する抗酸化作用をもっています。さらに最近の研究から、強力な抗酸化作用と抗炎症作用に加え、神経の情報伝達経路を調節する作用をもつことが明らかにされ、うつ病、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患の予防と治療への応用が期待されています。
フェルラ酸は、食事から摂取できる他のポリフェノールや抗酸化物質と比べて、より長い時間血流にとどまり、血液脳関門を通過しやすいことから、脳に届きやすいといわれています。

フェルラ酸の機能

アルツハイマー病の予防と症状改善

脳の毛細血管は、脳へ酸素や栄養の供給し、老廃物を排出するための経路であり、認知機能の維持に重要な役割をもっています。最近の研究から、アミロイドβオリゴマーが脳毛細血管の収縮を引き起こし、アルツハイマー病の主要因とされているアミロイドβの蓄積を加速する可能性が明らかにされたことから、脳の毛細血管の収縮がアルツハイマー病の一因であると考えられています。

マウスを使った実験から、フェルラ酸を30日間投与すると、脳の海馬において毛細血管の収縮が抑制され、アルツハイマー病を発症しているマウスでは、アミロイドβの沈着と空間記憶障害が改善されることが示されました。
ヒト臨床試験でも、認知機能に効果があることが報告されています。100名を超えるアルツハイマー病の患者さんにフェルラ酸を含むサプリメントを9ヶ月間投与したところ、認知機能の低下が抑制されました。さらに、アルツハイマー病やレビー小体型認知症の周辺症状に効果があったことが報告されており、認知症の周辺症状への応用も期待されています。
フェルラ酸は、アルツハイマー病から起こる記憶力の低下を抑える新治療の開発のために注目されています。

フェルラ酸を効率的に摂取するには

フェルラ酸は主に穀類に含まれており、その他にはコーヒーやナッツ類にも含まれています。私たちの主食である米にも含まれています。米のフェルラ酸含量は、玄米で最も多く、次いで胚芽米、精白米となっており、精米されていないものほど多く含れています。小麦でも同じです。理由は、フェルラ酸は細胞壁に多く含まれており、精米の過程で細胞壁が失われるからです。したがって、精製されていない玄米等を食べることで、効率的に摂取することができます。

参考文献

Kimura K
A Pilot Study of Treatment with Ferulic Acid and Angelica archangelica Extract for Cognitive Impairment-Effects of Delay on Conversion from Mild Cognitive Impairment to Dementia-
Journal of New Remedies & Clinics, 63 (2014)

西沢 千恵子, 太田 剛雄, 江頭 祐嘉合, 真田 宏夫
穀類のフェルラ酸含量
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Thapliyal S, Singh T, Handu S, et al.
A Review on Potential Footprints of Ferulic Acid for Treatment of Neurological Disorders
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Ferulic acid ameliorates alzheimer’s disease-like pathology and repairs cognitive decline by preventing capillary hypofunction in APP/PS1 mice.
Neurotherapeutics, 18 (2021)